物理教育の現場から

受験指導、ICT、クラス運営、アクティブラーニング、探究学習など、多岐にわたって現場目線で

2012 ICUの問題が面白かった!!

生徒と一緒に考えて、おお!っとなった問題を紹介します。

問題

水を入れた水槽内に直方体の石材が沈んでいる、石材の密度は、水よりも大きいとする。さて、図のように石材を横向きに置いてある状態から、90度回転させ、縦に起こした。この際起きる重心の変化として正しいものを以下の選択肢から選び答えよ。ただし、石材を縦に起こしたとき、水面の上にでることはないものとする。

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ア 水の重心は低くなり、全体の重心の位置は高くなる。

イ 水の重心は低くなるが、全体の重心は変わらない。

ウ 水の重心は変わらず、全体の重心も変わらない。

エ 水の重心は変わらないが、全体の重心は高くなる。

 

 

解答は ア 水の重心は低くなり、全体の重心の位置は高くなる。

 

私と生徒の試行錯誤をつらつらと書いていきます。

 

1 水の重心を考えよう。

以下は、この水槽を横から見た断面です。凹んでいる部分は石材を示しています。

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石材を立てると、以下のように重心が変化します。

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図を描いてみたけれど、これで考えた重心が、果たして上がったのか下がったのか、判断が難しいぞ?

石材の大きさが描いてあれば、数字を使ってもう少し考えやすくなるのに!

 

こんなつまずきがありました。

 

その後、「冷静に考えると、石材を縦にしたとき水面より上に出ないなら、水面の高さは変わらないはず。そう考えると、最初上側にあった部分の水が下側に移動しているだけである。水が下側に移動しているのなら、水の重心は低くなるな。」という考えに至りました。

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2 さて、次は、水と石材の全体を考えよう。

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縦にしたときも同様に考えると

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むむ?上がる下がるを、水と石材それぞれ分析できるけど、どれくらい上がるのか、どれくらい下がるのかがわからない。石材や水の重さや大きさがわからないから計算できないぞ。水の方が圧倒的に大きかったら下がる方が勝ちそうだし、石材がとても大きかったら上がる方が勝ちそうだ。この考え方では結論は出せないのか?

 

たぶん2分くらい生徒とじっと図を眺めていました。

 

 

3 水のときに書いていた図を見てひらめいた!

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最初の方に書いていたこの図です。これは水が下側に移動した、というのを考えた図だけれど、逆に、石材が上に移動した図でもあるはずだ。そして、水と石材だと石材の方が密度が高い(重たい)と書いてある。

 

ということは、より重いものが高い位置に移動しているので、全体での重心は高くなるとわかる!!

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かなりスッキリ解答が出来上がりました。

 

4この問題の面白さはどこか

考えている現象自体は、重心の基礎的な考え方です。しかし大きさ、重さなどの具体的な数字が全く出てこない。だから計算をコツコツしていくということができない。

しかし、「密度の大小」の情報だけで解答にたどり着けるようになっている。

情報を削りに削っているのに答えが出る、というのはとても面白いことだと思いました。あと生徒と一緒にもんもんするのも楽しい。

 

情報を極限まで少なくした問題を思いつけるようになりたい。とてもかっこいいです。